フルオーダーならではの適応性やフリーモジュールでこだわりを実現〔O邸(01)〕

10月の終わり頃だっただろうか、オフィスに一本の電話が入った。

たまたま取ったのが私だったのが、このクライアントとの出会いである。若いがしっかりとした口調、しかし何処か不安げで焦った様な雰囲気が窺える。話によるとマイホームを新築中、しかも完成も間近に迫っているという。

通常インテリアやキッチンを扱う会社に、その時期にいるクライアントからの電話はほぼ無い。何故ならキッチンなんかは特に、建築の初期段階に決めないといけない事が多く、商品自体も長い納期が掛かってしまう。

更に建築側の設備工事と絡む部分が多い為、前半には給水管配置や電源やガス管の位置をしたりするので、後半にプランニングしている状態では単純に間に合わない。施主もそれは把握していたので、相当慌てていた印象であった。

それから間も無く来店され、打合せを行なった。施主はそれまでキッチンを後回しにしていた訳ではなく、反対に初期より様々な方面で見学をし、見積を採る等をして、比較検討を繰り返していたと言う

むしろ思い入れが強いが為に、切羽詰まってしまうまで悩んでいた事が原因と言える。
現場としては大工工事も終盤に差し掛かり、設備・電気工事はキッチン待ちという状態であった。
前述のように一般的なキッチンメーカーでも数件見積を採ってみたが、価格とクオリティのバランスに納得がいかなかったようだ。

それからプランニングと修正を何度か繰り返し契約に至ったのだが、この短期間のやり取りの中でも施主のコダワリや、メーカーでは実現出来なかった部分への要望が満載だった。

フルオーダーならではの適応性やフリーモジュール(規定寸法に捉われない)でのサイジング等、細かな要望が多いクライアントに喜ばれている。

逆に言えばこういったケースを私は得意にしているところはあって、クライアントと一緒に悩み、解決策を見出していくのが好きだ。決め事の確認も兼ねられるので、自分には都合も良い。

さていよいよ実施設計に入るのだが、クライアントより導入したい機器やゾーニングは、ほぼ慌ただしい打合せの中で決まりつつあったので、プランニングにはそう時間は掛からなかった。

配置としてはアイランドと壁側にI型とう2列構成である。主にアイランド側には水回り(水栓・浄水器・シンク・食洗機)、壁側I型には調理器具(IHヒーター・レンジフード・電気オーブン)と機能を分けている。この大枠の中にクライアントの要望や、提案する機能・使い易さを盛り込んでいく。

(次号につづく)

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