いよいよプランに入っていく訳だが、キッチンは住宅設備と捉えられる事の方がはるかに多いのだが、私は「最も身近で、最も緻密なプランニングが必要な家具」と定義している。「緻密なプランニング」の中には、使う人に合わせたサイジングはもちろん、キッチンエリアにおける動線計画、生活スタイルに合わせた機器選び…等が含まれる。ただ中でも大切なのは、入り込む建築の全てにおいて邪魔をしない事。昔、建築界の世界四大巨匠の一人である「ル・コルビュジェ」が「住宅は住むための機械である」という格言を提唱した。その歯車を狂わせず、潤滑な生活を発信出来る場所でなければいけない。そういった視点でキッチンを計画する事を心掛けている。
まず一番に意識しなくていけなかったのは、クライアント夫婦のご主人が184cm、奥様が178cmという非常に長身カップルであること。前述の通りサイジングは非常に重要で、カウンター高さは教科書通りだと85cm前後になるのだが、身長に比例して当然高くなり、最終的には92cmで設定した。カウンターが高くなる=圧迫感という問題もありそうだが、キッチン内の床レベルを15cm落とす事でダイニング側には77cmの高さで見えてくるだけになった。同じ方向からバックのトール収納やレンジフードが見えるので、その高さは気にならない。
プラン初期、シンク側の天板は暗めの色のセラミックで進めていたが、シンクとの継ぎ目をシームレスにしたいことと、色目の重さを考慮してステンレスのバイブレーション仕上げにし、更に厚みを1.5cmと薄めに抑えた事も圧迫感の解消に一役買っている。元々クライアント手持ちの浄水器を天板上に置く計画だったので、他に出るものは水栓金具と浄水器の蛇口のみでフラットにし、かなりスッキリしたワークトップになっている。リビング方向からは「カフェ」風というキーワードの事もあり、扉類やパネルと同柄木目で2段式のマガジンラックにしている。同じ木目でものっぺりとしたサイドパネル1枚で納めてしまうより、表情だけでなく機能的にも向上したのではないだろうか。
シンク側でのキッチンの機能として主なのは60cmサイズのミーレの食洗機。最初の提案には45cmサイズの国産の引き出し式の物をプランしていたが、やはり比べてしまうと圧倒的な容量の違いや洗浄力、デザインで選ばれた。家族が揃っての食事は当然だが、友人等を招いたりと大人数が集まるシチュエーションも想定される家庭には持ってこいの代物である。
ワークトップはステンレスのバイブレーション仕上げでフラットな場所を広く取り、シンクは幅広でスッキリしたシンプルなものを配し、作業効率とスペース、更には日々の掃除を含むメンテナンス性を確保している。
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