限られた時間で密度の濃い仕事。また違う緊張感や達成感〔O邸(03)〕

調理機器としてもう一つの目玉は、バック収納のタワー部分に組み込んだ電気オーブンだ。こちらもドイツAEG(アーエーゲー)のもの。以前火元はガスが主流であったので、コンロとの連動の関係でカウンター下に設置する事が多かったが、電気オーブンは設置位置の自由度が高い。

今回は内部を見渡し易く、重さのある調理物を出し入れし易い腰上の位置に置いている。初期のプランではカウンター下に納めて、トール部分の無いフラットなバック収納になるところだったが、やはり使い勝手等を考慮した結果、この位置になり結果的にトール部分が後付けで出てきた感じである。このことにより目線より上の収納が増えたのと、凹凸が視覚的なアクセントになった。

クライアントがこだわったのは、言うまでもなく調理機器だけではない。やはり素材使いや色の組み合わせ等、かなり慎重に選ばれていた。これはキッチンだけの事ではなく、建築に関しても共通していたようで工務店もクライアントのペースに合わせて、一緒にじっくりと決めていったようだった。

建築工事自体が終盤に差し掛かり、内外装とも大詰めの中、現調・採寸へ現場に伺うと、キッチン待ちの為その場所だけが工事の半ばくらいの完成度であまり見ない貴重な?景色であった。そこで出会った職人の一人に「キッチンやっと決まった?」と苦笑されたのが印象深い。

キッチン全体のイメージを左右するバックの壁面には、コンクリートとも石とも見えるような質感のタイルを全面に。前述のトール部分の側面はコンロ近くの為、消防法により同系色のキッチンパネルという不燃材料を貼り付けている。何も考えないと、ここが白になったり、ラメが入ったりと非常に浮いた存在になってしまう。こういった所までしっかりこだわりたい。

 

今回はきっかけから施工完了まで、非常にスピード感があり、メールや電話でのレスポンスも求められた。普通は殆どの案件に関してはプランニングから契約までが、実際の施工の6〜4ヶ月前くらいには終わっている。

限られた短い期間の中で、密度の濃い仕事をさせて頂いた事で、また違う緊張感や達成感を味わう事が出来た物件であった。

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